大規模大気特論 テキスト
大規模大気特論の受験対策用に、過去に出題された内容を中心に、まとめています。
特に、よく出題される重要なポイントを、下線としました。
過去問の解説・補足や、テスト前のおさらい・確認などに、活用できるよう更新していきます。
大気の層
地表付近の気温勾配地表の温度差 - 100m上空 = 0.98℃が基準で、
基準より差が大きい場合 | 不安定(煙が大気中で上下に乱れる。)ループ形 |
基準と同じ場合 | 中立・弱安定(煙が錐形に広がる。)錐形 |
基準より差が小さい場合 | 安定(煙が上下方向には広がらず、横に流れる。)扇形 |
上層不安定、下層安定 | 上層のみで上下方向に広がる。 屋根形 |
上層安定、下層不安定 | 下層のみで上下方向に広がる。 いぶし形 |
●平坦地上に形成される境界層など
境界層種類 | 発生しやすい条件等 |
---|---|
接地安定層 | ・晴れた日の夜に起こりやすい層。 ・晴れた日の夜は放射冷却が起き地表が冷たくなり、上空が暖かくなり大気が安定。 ・地上200m以下に境界層ができる。 |
中立境界層 | ・曇りの日や風の強い日に(強制対流で)起こりやすい層。 ・層の厚さは、一般に数百m以下。 ・風速勾配によって乱流が作り出される。 |
混合層 | ・晴れた日の昼に起こりやすい層。 ・晴れた日は地表が日光で暖まり、熱対流によって大気が混合されおこる境界層。 ・地上1km以下に境界層ができる。 |
内部境界層 | ・滑らかで冷たい海上からの安定な風にのった煙が、陸上の乱流に応じて拡散幅を変化させる状態。 ・海上は安定型、陸上で乱流になる。 |
地形性逆転層 | ・谷間や盆地の内部に冷気がたまり、煙は地上近くに滞留しやすい状態。 |
沈降性逆転層 | ・高気圧圏内では、上層大気の沈降による断熱昇温により、下層大気との間に逆転層が形成され、上層への拡散が抑えられる状態。 |
陸風 | ・陸上で夜間に形成される安定層は、厚さがせいぜい100m程度であり、地上近くの煙の拡散にかかわる状態。 夜間に陸から海上に向かって吹く風のこと。 |
●パスキルの安定度
風速 (地上 10m) |
日射量 cal/cm2・h | 本曇 | 夜間 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
≧50 | 49~25 | ≦24 | 上層雲(5~10) 中・下層雲(5~7) |
雲量(0~4) | ||
<2 | A | A-B | B | D | (G) | (G) |
2~3 | A-B | B | C | D | E | F |
3~4 | B | B-C | C | D | D | E |
4~6 | C | C-D | D | D | D | D |
6< | C | D | D | D | D | D |
環境省HPより引用
●用語
温位 = ある高さの空気を1000hPaまで乾燥断熱変化させたときの絶対温度です。
空気の高さを地上面で統一したときの絶対温度
γd = 気温鉛直分布における乾燥断熱減率
排煙の拡散
●規模による拡散の違い
規模 | 考慮する距離 |
---|---|
小 | 数百m |
中 | 数十km |
大 | 数百km |
●煙突ガスの上昇
上昇度 大 | 上昇度 小 |
---|---|
吐出速度が大きい | |
風速が早い | |
大 | 大気が安定 |
ガス温度が高い | |
ガス量が大きい |
●煙突ガスの下降
名称 | 説明 |
---|---|
ダウンウォッシュ | 煙突の背後に生じる渦に巻き込まれ、 急激に降下するガスの流れ |
ダウンドラフト | 建物の背後に生じる渦に巻き込まれ、 急激に降下するガスの流れ |
●有効煙突高さ
有効煙突高さ=実煙突高さ+運動量上昇高さ+浮力上昇高さ 地上の濃度は有効煙突高さから拡散した場合として算出する。 |
●最大着地濃度
高い | 低い |
---|---|
ガス量が大きい | |
有効煙突が高い | |
大気が安定 | |
日射しが強い | |
(発生源より距離が遠い) |
●モデル
種類 | モデル名 | 説明 | 解 |
---|---|---|---|
複雑地形の 拡散モデル | VALLEY | 複雑地形上の最高濃度を予測 | |
CTMD | 点発生源を対象とし孤立丘の周囲の気流と拡散の予測 | 解析 | |
AERMOD | 複雑地形状の大気・建屋・対流混合層内の拡散も対応可能 | ||
海上および沿岸 拡散モデル | Lyons&Cole | 沿岸地域で発生するヒュミゲーションの拡散 | |
OCD | 海上・沿岸モデル、海上での拡散幅の推定法 | ||
建屋後流 拡散モデル | ISC | EPAの工業発生源を対象としたモデル | |
PRIME | ISCの後継モデル。正規型プルーム拡散式 | 解析 | |
NRC | 低レベル放射性物質の大気拡散の予測方法 | ||
自動車排出ガス 拡散モデル | HIWAY | EPAの直線単路部モデル | 解析 |
CALINE | カリフォルニアの直線単路部モデル | ||
SRI | 高層ビルに囲まれた道路上の拡散を予測ストリートキャニオンモデル | ||
STREET | |||
CPBM | |||
OSPM | |||
CAR | |||
高密度ガス 拡散モデル | 三次元数値解析 | 運動量、質量、エネルギーなどの保存則を利用 | |
スラブ | 保存則を水平方向および鉛直方向の断面に積分した方程式 | ||
正規型プルームパフ | |||
光化学大気汚染 モデル | 格子 | 固定した格子点での時間変化を予測 | 数値 |
流線路 | 空気塊を追跡しながらその時間変化を予測 | 数値 |
●石油の組成
名称 | 含有率 (%) |
---|---|
炭素 | 83~87 |
水素 | 11~14 |
硫黄 | 5以下 |
窒素 | 0.4以下 |
酸素 | 0.5以下 |
金属 | 0.5以下 |
●精製工程
名称 | |
---|---|
ガス | |
LPG | |
ナフサ → ガソリン |
水素化精製:硫黄分などの不純物除去 接触改質:ガソリンのオクタン価の向上 ガソリンは昭和40年台後半から無鉛化 ガソリン中のベンゼン含有率は平成14年から1%以下 |
灯油 | 平成17年以降、軽油中の硫黄分10ppm(0.001質量%)以下の販売が開始 |
軽油 | |
残留分 | 接触分解:重質油を軽質油へ転換 重質油脱硫:重油留分から硫黄分などの不純物除去 重質油を軽質油留分に分解 |
●各事業の除去方法
場所 | SOx | NOx | ばいじん | 他 |
---|---|---|---|---|
製油所 | クラウス法(H2S) →スコット法 |
・低NOxバーナー ・アンモニア触媒還元法 |
・炭化水素対策 ベーパー吸収設備(ベーパーリターン) ベーパー凝縮、浮屋根タンク |
|
石炭発電 | 石灰スラリー吸収法 | アンモニア触媒還元法 | 10~20g/m3 電気集塵装置 |
石炭は輸入品 微粉炭燃焼(ミルで微粉化) 最もCO2発生が多い (発電量・発熱量あたり) |
![]() |
||||
重油発電 ガス発電 |
乾式:アンモニア | アンモニア触媒還元法 サーマルNOxのみ |
電気集塵装置 | 白煙防止:90℃再加熱 |
セメント | 不要 | 無触媒還元法 低NOxバーナー 低空気比燃焼 |
キルン:電気集塵装置 粉塵:バグフィルター |
ロータリーキルン:MAX1450℃ |
ごみ焼却 | 塩化水素と同時除去 アルカリ湿式 消石灰ーバグフィルター |
アンモニア触媒還元法 フューエルNOxが多い |
3-4/m3 | ストーカ炉が主流 ガス化溶融炉が増えている 塩化水素が多量に発生 ●排ガスの有害物質 塩化水素:500~1000ppm NOx:80~200ppm SOx:50~150ppm ばいじん:3~4g/m3 水銀:0.1~0.5mg/m3 ダイオキシン:1~10ng-TEQ/m3 ●ダイオキシンの発生 ・塩素化合物と低温(500℃以下)での燃焼により生成される物質 ・近年では、燃焼温度を800℃以上で燃やしている ●水銀(乾電池・体温計・蛍光灯起因)の処理=活性炭、バグフィルタ、水や吸収液噴霧 |
鉄鋼 | 焼結炉:7割発生 石灰スラリー吸収法 |
アンモニア触媒還元法 低NOxバーナー |
●SOxは焼結炉以外でも発生する。 ・焼結炉排ガスの脱硫は湿式から乾式脱硫法も導入されている。 ・原料や燃料の低硫黄化が進んでいる。 ●脱硝方法はアンモニア接触還元法 ●コークス炉:強粘炭を1000℃ |
●計算式
算出値 | 名称 | 条件 | 式 |
---|---|---|---|
煙突補正高さ | ボサンケの式 | 大気汚染防止法の k値規制の有効煙突高さ (ダウンウォッシュ無し) |
He=Ho+0.65(Hm+Ht) He:補正煙突高さ Ho:実際の排出口高さ Hm:排ガス運動の補正高さ Ht:排ガス温度の補正高さ |
ブリッグスの式 | ダウンウォッシュ有り時の煙突高さ補正 | 吐出速度Vg<1.5uなら He=Ho+2xDx(Vg/u-1.5) D:煙突の直径 ダウンウォッシュは吐出速度が風速の1.5倍以下で発生、ダウンドラフトは煙突を建屋の2.5倍にする |
|
風速 | カルマン | 対数分布 | u(z)=U*/k・ln(Z/Zo) u(z):高さZmの風速 U*:摩擦速度 k:カルマン定数 Zo:地表面粗度長 風速は高さ方向に対数分布である |
煙の上昇高さ | モーゼスとカーソンの式 | ダウンウォッシュ無し | ΔH=(C1VgD+C2QH1/2)/u ΔH:煙上昇高さ C1、C2:大気安定度定数 排出速度大、ガス量大で煙は上昇し、風速が大きいと低くなる Vg:吐出速度 D:煙突出口径 QH:排出熱量(cal/s) u:煙突出口の風速 *C1,2の係数は大気不安定な方が大きい(煙は高くなる) |
ブリッグスの式 | ダウンウォッシュ有り時の煙突高さ補正 | a)有風時で安定時 安定時:ΔH=2.6xF1/3x(g/T・dθ/dz)-1/3xu-1/3 不安定、中立:ΔH=1.6xF1/3xu-1/3xL2/3 b)無風時 ΔH=1.4xQH1/4(dθ/dz)-3/8 F:浮力フラックス(=0.0037QH) g:重力加速度 T:温度 dθ/dz:温位勾配 u:出口の風速 L:排煙の距離 |
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コンカウの式 | ダウンウォッシュ無し,有風 | ΔH=0.175xQH/u3/4 | |
拡散計算式 | パフの式 | 無風時の瞬間排出の煙の拡散濃度の計算に使用 | 煙の放出量をQ[m3]、σ[m]を各方向の標準偏差とすると、 C(濃度)=Q/((2π)3/2・σx・σy・σz)xF(X)F(y)F(z) |
ブルームの式 | 有風時の連続排出煙の拡散濃度を計算 | Q[m3/s]、風はx軸方向に風速Uでだけ吹いているとすると C={Q/(2πuσyσz)}xF(y)xF(z) |
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拡散幅の推定 | パスキルの式 | 地上風速と日射量、雲量(赤外放射量) | 大気安定度を6段階評価し風下距離から拡散幅を対数グラフで求める。 A~Fは順に強、並、弱不安定、中立、弱安定、並安定、強不安定なAで煙源最も近く、 かつ最も高い最大着地濃度、安定度の高いFでは煙源から最も遠く、かつ低い。 不安定なほど(F→A)、拡散幅は大きい |
ターナーの式 | パスキルとほぼ同等 | 太陽高度、雲量、地上風速にて7段階(1~7)、日射量を太陽高度にしただけ? 風速はゼロとしているので無風時の式 |
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サットンの式 | 大気汚染防止法のk値規制になった式 | σyとσzが風下距離Xのべき乗に比例する σy=Cy・X(1-n/2)/√2 σz=Cz・X(1-n/2)/√2 Cy、Cz、nは大気安定によって決まる係数 最大着地濃度の推定式の元式 |
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最大着地濃度 | サットンの式 | He:補正煙突高さ u:煙突出口の風速 |
Cmax=2Q/eπuHe2・(Cz/Cy) Xmax=(He/Cz)2/(2-n) 最大着地濃度はHe2に反比例し、SO2排出規制(K値)では1本の煙突から排出できる SO2量はHe2に比例させているのでK値規制は最大着地濃度が一定に保たれる。 |